VOL.47
「わはーと猫と青白いヤツ」







翌日の朝。

ホコリ
「にゃ・・」


ホコリは目が覚めた。
いつの間にか眠っていたようだ。

ホコリ
「あれ、俺っち何か変だぞ・・」


ホコリは辺りを見回した。

ダンナ
「何が変だよバカ」


ホコリ
「にゃ、ダンナ?」


ダンナ
「見れば分かるだろ・・」


彼は中渕檀那。
ホコリがいつも口に出しているダンナ本人であり、
彼の保護者でもある。

ホコリ
「俺っち・・寝てたのか?」


ダンナ
「あぁ、帰ってきたら
お隣のガキんちょと気持ちよさそうにな」


ホコリ
「そ、それって・・」


ダンナ
「安らかにって意味だよ」


ホコリ
「にゃ・・そ、そうか。
って、お隣のガキんちょって?」


ダンナ
「この前引っ越してきた
佐久間さんちの子供だよ。
剛太郎って言ったかな」


ホコリ
「ゴー?」


ダンナ
「まったく・・
今日はたまたま仕事が早かったから良かったものの・・
もうちょっと遅かったら
親御さんも警察に届けるつもりだったんだぜ?」


ホコリ
「にゃ・・ご・・ごめん」


ダンナ
「親御さんには俺から言っといたから。
お前ももうすぐ二十歳になるんだから
びしっとしろよ」


ホコリ
「それはあんまし関係ねーんじゃ・・」


ダンナ
「大人になれってことだよ」


ホコリ
「にゃあ・・」


ダンナ
「ほれ、もう朝飯できてっから
とっとと顔洗ってきちまえよ」


ホコリ
「う、うん」


ホコリはソファーから起き上がり
ちびちびと洗面所へ向かっていった。



その後、ホコリは
お隣の佐久間宅へ謝りに行った。

ゴーの父
「事情は大体分かったよ。
だけど僕たちも親として凄い心配したんだ。
次からは気をつけてくれよ」


ホコリ
「にゃ・・ごめんなさい」


ゴーの母
「もうその辺で良いじゃない。
彼も十分反省してくれてるし」


ゴーの父
「分かってるよ」


ゴーの母
「それに剛も彼のこと
凄い気に入ってるみたいなのよ」


ゴーの父
「そうか・・
まさか学校始まる前から
友達ができるとは思わなかったがな」


ホコリ
「あのー、俺っち・・
じゃなくて俺はどう反応したら・・」


ゴーの父
「剛も良い人に会えたんだ・・
これからも息子のことよろしく頼むよ」


ホコリ
「にゃ・・・は、はい。

それでゴーは・・」


ゴーの母
「今ぐっすり眠ってるわ。
物凄い、良い寝顔なのよあの子」


ホコリ
「じゃ、じゃあ
起こしちゃ悪いから
俺失礼します」


ゴーの母
「これからもお隣として
よろしく^^」





佐久間宅を後にしたホコリは
ドアの前にたたずんでいた。

ホコリ
「にゃあ・・
俺っちも突っ走るの
ちょっとやめとかないとかな・・」


ホコリは少ししょぼんとした顔で
自分の家のドアを開けようとした。

ガチャ

ホコリ
「にゃ?」


そのときホコリの右端の
部屋のドアが開いた。

青白いヤツ
「・・・」


出てきたのは
長身で青と白のふさふさの毛並みに包まれた
スーツ姿の人間であった。

ホコリ
「・・・」


ホコリは唖然とした。

青白いヤツ
「おはようございます」


青白いヤツはふかぶかと礼をした。

ホコリ
「お、おはようございます」


ホコリは驚きながら
釣られる形で礼をした。

青白いヤツは眼鏡ごしににっこり微笑みながら
ホコリの前を歩いていった。

ホコリ
「・・・」


ホコリは終始青白いヤツを見送った。

ホコリ
「・・・」


可愛い顔してなんて礼儀正しいんだ!
青白いヤツの揺れている尻尾を遠くから見ながら
ホコリは更に唖然としていた。

ホコリ
「っていうか・・隣にあんなの住んでたっけ」






ダンナ
「え、お隣?」


ホコリ
「うん。

ゴーじゃない方のお隣な」


ダンナ
「右隣の方か・・
はて、誰か住んでたっけ」


ホコリ
「でも俺っちさっき見たんだよ。
背がダンナよりちょっとちっちゃい位で
スーツ着た青白くて可愛い顔のヤツが!」


ダンナ
「へぇ・・」


ホコリ
「ホントに知らねー?」


ダンナ
「よくわからんな;
今度挨拶に行ってみるか」


ホコリ
「うん。
俺っち一人だと何か不安でさ」


ダンナ
「何言ってんだよ。
事実知るまでどこの子かわかんない子を
招いてたくせに」


ホコリ
「にゃ; あれはだな」


ダンナ
「まぁいいけど。
でもマジで空き家だったと思うんだけど・・」







その頃、
ガルウィンドと氷河は部活で
学校に向かっていた。

氷河
「今日も部活か・・」

ガルウィンド
「そうだね〜
むしろ春休みは部活ばっかりしてるような」

氷河
「少しくらい家でのんびりできたっていいのにさ・・」

ガルウィンド
「だね^^;」

氷河
「ん?」

ガルウィンド
「氷河?」

ガルウィンドが校門をくぐろうとしたとき、
氷河は向こうからやってくる
一人の人物に目を向けた。

青白いヤツ
「・・・」


氷河
「うわぁ、似合わねぇ(笑」

ガルウィンド
「ちょっと氷河、聞こえちゃうよ^^;」

青白いヤツ
「・・・」


青白いヤツは急に
二人の方を直視した。

氷河
「げ;」

ガルウィンド
「だから言ったのにぃ;」

青白いヤツ
「・・・ねぇ」


青白いヤツはのほほんとした表情で
話しかけてきた。

ガルウィンド
「な、なんでしょうか」

青白いヤツ
「幻想学園ってここでよかったんだよね?」


氷河
「そ、そうっすけど」

青白いヤツ
「よかったぁぁぁ>w<」


氷河
「!?」

青白いヤツはガッツポーズを決めた。

青白いヤツ
「やぁホント〜によかったよぉ。
万が一違ってたらボク、どうしようかとぉ・・ねぇ」


ガルウィンド
「そ、そりゃよかったですね」

青白いヤツ
「えっと、キミたちはここの生徒?」


氷河
「そうっすよ」

青白いヤツ
「・・・」


青白いヤツは急に真面目な顔をした。

青白いヤツ
「そうか・・
恥ずかしいことを聞いてしまったね。
私は今度ここで教員実習生として就く
カカルっていうんだ。
よろしく」


氷河
「あ、よろしくお願いします」

カカルは手を差し伸べ、
氷河とガルウィンドは彼と握手を交わした。

カカル
「それじゃあ、私はこれで・・
失礼」


カカルは先に校門をくぐり
学校内へと向かっていった。

二人はしばらくカカルの揺れている
尻尾を直視していた。

ガルウィンド
「・・・」

氷河
「・・・」

ガルウィンド
「見た?」

氷河
「な、何を」

ガルウィンド
「あの変貌振りを」

氷河
「あぁ、みたみた」

ガルウィンド
「すっごい真面目な表情してたよね。
なのにすっごい可愛いの・・顔が」

氷河
「だよな」

ガルウィンド
「ボク・・思わず吹いちゃいそうになって^^;」

氷河
「その割りにはしゃぎ方がそのまんまだったしな」

ガルウィンド
「しかも先生なんだねぇ・・
世の中分からないよね」

氷河
「うん」






その頃カカルは。

カカル
「ここだな、ボクの席は」


アルヴァン
「ん?」


隣に座っていたアルヴァンとカカルは目が合った。

アルヴァン
「お前は・・・」


カカル
「カカルです^^
初めまして(_ _」


カカルは笑顔で挨拶をした。

アルヴァン
「あぁ、実習生の・・
校長にはもう挨拶したのか?」


カカル
「はい。
短い間ですが
よろしくお願いします」


アルヴァン
「おう。
俺はここに就いて20数年の
アルヴァンだ。
分かんねぇことあったら何でも俺に聞いてくれよ」


カカル
「分かりました^^

ところでアルヴァン先生」


アルヴァン
「アルでいいぜ」


カカル
「それでは・・アル先生」


アルヴァン
「なんだ?」


カカル
「20数年というと・・
本当は何年勤めてるのか分からなくなってきてるんですか?」


アルヴァン
「・・・そこ突っ込むんかい」


カカル
「はい(笑」







ホコリ
「いくぜゴータロー!」


ゴー
「ゴーだってば!」


ホコリ
「うりゃ!」


ホコリとゴーは
家の近くの公園でサッカーをしていた。

ホコリの蹴ったボールは勢いよく飛び、
ゴーは自身の犬脚でガッと受け止めた。

ホコリ
「なー、なんでゴータローってのやなんだ?」


ゴー
「だって男っぽいしー」


ホコリ
「お前男じゃん」


ゴー
「ホコリも男なのかー?」


ホコリ
「あぁ、俺っち顔は女っぽいかもしんねーけど
れっきとした男だぜ」


ゴー
「初めてしったー」


ホコリ
「じゃあ覚えとけ。
俺っちは誇り高きトラネコの
中渕誇だ!」


ゴー
「ほこりっぽい名前だねー」


ホコリ
「うっせー!」


二人はサッカーボールを蹴り合いながた
一言ずつ交わしていった。

ゴー
「ホコリって大学生なんだろー?」


ホコリ
「おー、そうだぜ!」


ゴー
「勉強とかしなくていいのか!?」


ホコリ
「春休みだからいーんだ」


ゴー
「よゆーだな!」


ホコリ
「心にゆとりをもたねーとな!」


ゴー
「ナマケモノになっちゃうぞ!」


ホコリ
「おー、気をつけねーとな!」


ゴー
「気をつけろよ!」


ホコリ
「お前も中学生になったら
勉強ちゃんとするんだぞ!」


ゴー
「わん!」


カカル
「ん?」


公園の前を通り過ぎようとしたカカルは
朝に見かけたホコリに気づいた。

ホコリ
「・・にゃ」


ゴー
「わん? どーした」


ホコリ
「アイツ・・」


ホコリもカカルの姿に気づいた。

ホコリ
「おーい、何か用かー?」


カカルは二人の方へ向かっていった。

カカル
「やっぱりキミは朝に見た子か!」


ホコリ
「見りゃ分かるだろ。
っていうかあんた誰だよ」


カカル
「ボクはねぇ・・うぉっほん」


ホコリ
「?」


カカル
「私はカカル。
ご存知のとおり君の住んでるとこの隣の人だよ」


ホコリ
「やっぱ隣に住んでたのか・・」


ゴー
「それにしてもすげー可愛い顔」


ホコリ
「バカ、失礼なこと言うな」


カカル
「いや、別に気にしてないよ。
よく言われるんだ・・
可愛い顔してスーツ着やがってとかね^^;」


ホコリ
「正直に言うと
俺っちもそう思ったりして」


カカル
「なはは^^;

でもこう見えても私は
学校の先生やってるんだ。
教員実習生だけど」


ゴー
「なんだそれ」


ホコリ
「先生の卵ってヤツだぜ」


ゴー
「えー、卵生むの!?」


ホコリ
「違うって;」


カカル
「まぁ先生になる勉強してるっていうところかな・・」


ホコリ
「ってーことは・・
あんた大学生?」


カカル
「うん、そうだよ」


ホコリ
「そーか!
俺っちと同じだな^^」


カカル
「え、君も大学生なの?」


ホコリ
「おう!
今年で2年生だぜ!」


カカル
「へぇ・・
ちなみに私は4年生なんだ。
こんな顔しててもお酒飲めるんだよ(笑」


ゴー
「すげー」


カカル
「そうか、君も大学生か・・
いやぁ、一人暮らしってのは心細いから
良い友達ができて本当によかった><」


ホコリ
「一人暮らし?」


カカル
「うん。
たまに顔出しちゃうから
そのときはよろしくね」


ホコリ
「あ、うん。
よろしくな」


ホコリとカカルは握手を交わした。

ゴー
「オレもよろしくな!」


カカル
「えっと君は・・」


ゴー
「佐久間ゴーだ!」


ホコリ
「ゴータローだろ」


ゴー
「ゴーでいいの!」


カカル
「あぁ、最近引っ越してきた
佐久間さんの・・
それじゃあ君ともよろしくだね^^」


ゴー
「うん♪」


カカルはゴーとも握手を交わした。

ホコリ
「にしてもこのカカルってヤツ・・
すっげー嘘つくな・・」


ホコリはぼそっとつぶやいた。

明日は4月1日。
新年度の始まりである。



続く。


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