VOL.52
「ダブルデート」







トゥルース
「・・・」


トゥルースは1冊の本を読んでいた。

『女の積極的なデートの仕方』

トゥルース
「・・・」


トゥルースはページの途中で
パタンと本を閉じた。

その表情は何かに対して
思いつめているようだった。

トゥルース
「・・・はぁ」


トゥルースはため息をついた。
そして窓の方に振り向き、一言つぶやいた。

トゥルース
「ガル・・・」


さらさらのロングヘアーと尻尾を持つ、
グレーの毛色の高校生、
トゥルース・アイシクルは考えた。

トゥルース
「もう6月も終わりか・・
そもそも今年が終われば
高校生活もピリオドを打つのか・・

俺・・あんまり前と変わってないような気がする・・」


窓の外に降り注ぐ雨を見つめながら、
トゥルースは独り言をペラペラとつぶやいた。

プルルルル

プルルルル

トゥルース
「!?」


一本の電話がかかってくると、
トゥルースは何故か尻尾をピンと立てて反応した。

トゥルース
「・・・」


トゥルースは何度も息をゴクリと飲みながら、
恐る恐る受話器に手を近づけた。

ガチャ

トゥルース
「・・・も、もしもし」


トゥルースは小声で問いかけた。

ガルウィンド
「あ、もしもしトゥルース?w」


トゥルース
「・・・」


トゥルースは一気に感情が爆発したのか
尻尾をブンブンと振り始めた。
その風力だけで涼めそうな勢いだ。

ガルウィンド
「ん、どしたの?」


トゥルース
「んん、いや、なんでもない・・」


トゥルースは必死に感情を抑え、
振っていた尻尾も徐々に風力を落としていった。

トゥルース
「そ、それでどうしたの・・?」


ガルウィンド
「トゥルース、今度の土曜日って空いてる?」


トゥルース
「土曜日? ちょっと待って」


空いてますよーに
空いてますよーに!!
トゥルースの頭の中はその願いでいっぱいだった。

そして受話器の前に戻ってきた
トゥルースの顔は勝利の微笑みが浮かんでいた。

トゥルース
「空いてるよ・・!」


ガルウィンド
「空いてる? よかった〜!
ホントによかった・・^^」


トゥルース
「そ、それで・・
ど、土曜日に何かあるの?」


トゥルースは胸に手をあて
ドキドキしながら問いかけた。

ガルウィンド
「うん、よかったら一緒に映画見に行かない?
と思ってねーw」


トゥルース
「映画・・」


心臓の鼓動は一気に高ぶり、
その勢いは受話器に届きそうだ。

トゥルース
「え・・映画って・・
が、ガルと・・」


ガルウィンド
「決まってるじゃん〜♪
後ドルツー君とホコリさん!」


トゥルース
「ドルチェとホコリさん・・」


心臓の鼓動は段々収まっていった。

ガルウィンド
「ドルツー君が来週公開される
エヴァ破見に行かないかって誘ってきてね、
しかも公開初日だよ初日!
流石のボクも公開初日は行ったことないからねぇ」


トゥルース
「・・・へぇ」


トゥルースはすでに口調が冷めていた。

ガルウィンド
「あーそんでね
大勢で行くのもあれだから
4人で行くことにしたんだ〜
それでドルツー君はホコリさん誘うって言うから
ボクも1人誘ってって言われてさ。

どうかなトゥルース」


トゥルース
「う、うん。
今度の・・」


ガルウィンド
「土曜日だよ。
27日」


トゥルース
「27日か・・
うん、大丈夫」


ガルウィンド
「よかったw
そういや一緒に映画行くのって久しぶりだよね」


トゥルース
「そ、そうだね」


なんだろうなこのもどかしさ・・
でもそんなに人生甘くないよね・・
でも二人きりだったらよかったな。

ガルウィンド
「ちなみに今
ドルツー君といつから見に行こうかって
相談してるんだけど」


トゥルース
「え、どこで見るの?」


ガルウィンド
「新宿ミラノだって。
知ってる?」


トゥルース
「知ってるよ、日本一大きいとこだろ」


ガルウィンド
「うん〜
新宿だから中央線一本だしね」


ガルウィンドとトゥルースは
荻窪に住んでいるのだ。
荻窪から新宿までは中央線で6駅先にある。

ちなみにホコリは国分寺、
ドルチェは吉祥寺である。
いずれも中央線一本で
新宿に行くことができる。

トゥルース
「そうだね、でも大丈夫かな」


ガルウィンド
「え、何が?」


トゥルース
「エヴァって凄い人気だし、
公開初日に行くとすると
朝イチで行っても凄い行列じゃないかな」


ガルウィンド
「うん、下手すりゃ
深夜から並んでるかも」


トゥルース
「だからさ・・
ちょっと体力的にも心配なんだ;」


身体の少々弱いトゥルースは
長時間の並び待ちに対し
自身のスリムな身体を気にかけた。

ガルウィンド
「大丈夫だよ、
ボクが椅子持ってきて
トゥルース優先的に座らせてあげるから」


トゥルース
「あ、ありがとう・・」


ガルウィンドの優しさに反応し、
再び心臓の鼓動が強くなった。

ガルウィンド
「なーに、これでも陸上部だから
体力には自信があるしねw

それじゃあ話の続きは
また学校で話そう」


トゥルース
「うん、誘ってくれてありがとう」


そう言って
電話は切れた。

トゥルース
「・・・」


トゥルースは受話器の前で立ち止まり、
脳内で検索をかけていた。
本でよく見かけるような
典型的な映画館デートにおけるムードだ。

トゥルース
「・・・」


検索が終わり、
一言口ずさんだ。

トゥルース
「ダブルデート・・」


そう、これはダブルデートだ!
自分自身にそう言い聞かせた。






そして6月27日
土曜日。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版・破の公開日だ。
当然ながら新宿ミラノの入り口前には
エヴァ目的の人の長蛇の列が
朝からできていた。

ドルチェら4人は15時30分からの上映を
見るために13時から並んでいた。

ホコリ
「にゃはー、よかったなー
結構前に並べて」


ドルチェ
「結構どころか最前列の一歩前だからね。
この調子なら結構良い席取れるかも」


偶然にも前から2列目に並ぶことができた4人。
黒のTシャツを着たトラネコ、中渕誇は高揚していた。
その右隣でにんじん色のシャツを着た”フェンリル”、
ドルチェ・シルヴァニアンスは時間を確認していた。
一方、ホコリの左隣のガルウィンドとトゥルースは・・

ガルウィンド
「大丈夫?」


トゥルース
「うん、何とか」


暑さのためか、トゥルースは
ガルウィンドから借りた折りたたみ椅子に座って
タオルでタンクトップの下の汗を拭いていた。

この日は今朝から気温が高く、
昼過ぎから特に暑くなっていた。
下手をすれば今年初の”真夏日”になりえる。

ガルウィンド
「雨が降らないのは良かったけど
代わりに汗の雨だね、こりゃ^^;」


ドルチェ
「ホントーだよ・・
あー脱ぎたい」


ホコリ
「ダメだぞドル。
人前で脱いだらTシャツ容疑で捕まっちまうんだから」


ガルウィンド
「それを言うならワイセツですよ、ホコリさん」


彼らのやり取りに気温がそう簡単に下がるわけもなかった。

ドルチェ
「ホコリンはタフでいいよねぇ」


ホコリ
「にゃはは、タフなのが俺っちの取り柄だからな!」


ドルチェ
「そういや、トゥルース大丈夫?」


トゥルース
「大丈夫だよ」


ホコリ
「ドルよりトゥルースの方が辛そーだな」


トゥルース
「いや、本当に大丈夫ですから」


そう言いながらも
トゥルースはまだ汗を拭いていた。

ホコリ
「っていうかさっきからずっと
汗拭いてねーか?」


トゥルース
「そ、そうですかね」


これは興奮による汗です、
なんてとても言えなかった。

今までにトゥルースがガルとのシチュを
妄想した数は読者の想像の比じゃない。

スタッフ
「次の公演待ちの方は
会場内へお入りください〜」


ガルウィンド
「あ、やっと中に入れるよ!」


ドルチェ
「よっしゃw
中に入れるだけでもすごい変わるからね〜」


ドルチェの耳がピンと立った。

4人はスタッフに誘導される形で
映画館の中へ入っていった。



シアターの入り口前。
目の前の入り口の向こうでは
エヴァが放映されている。
防音対策が完璧なため、
音はまったく漏れていなかった。

ホコリ
「にゃ〜」


最前列から2番目に並んでいた4人。

ホコリはなんとか見えないかなと
入り口の隙間をキョロキョロと凝視していた。

ドルチェ
「そんなことしても見えないって」


ホコリ
「そーだよな」


ドルチェに突っ込まれ
早々にあきらめた。

ホコリ
「そーいや
二人はエヴァどのくらい知ってんだ?」


ガルウィンド
「ボク?
ボクはアニメと映画は全部見たって程度かな・・
ホコリさんは?」


ホコリ
「俺っちもそんな感じ!
スパロボにエヴァが出てたから
そんで興味持ったんだよな」


ガルウィンド
「スパロボかぁ・・」


ホコリ
「トゥルースは?」


トゥルース
「俺は・・実はエヴァの内容は知らないんですよ。

ガルに誘われてから序っていうのを見たんですけど」


ドルチェ
「そうそう、僕がDVD貸したんだよね」


ホコリ
「へー」


ガルウィンド
「序の方はTV版とあんまり変わってなかったけど
破の方はどうなのかな」


ドルチェ
「変わってるんじゃない?
新キャラもいたし」


ガルウィンド
「マリか〜
そいやアスカも苗字変わってたよね」


ドルチェ
「式波だっけ」


ガルウィンド
「そうそう、それも結構重要だよね」


トゥルース
「・・・」


トゥルースは既に瞳孔が開いていた。

ホコリ
「だいじょーぶか?」


トゥルース
「は、だ、大丈夫です;」


我に返ったトゥルースは、
暇つぶしにさっき買った
エヴァのパンフレットを見ようと
バッグから取り出した。

ガルウィンド
「あ、まだダメだよ」


パンフレットの袋とじをはがそうとするトゥルースに
ガルウィンドが慌てて引き止めた。

トゥルース
「え」


ガルウィンド
「そういうのは映画が終わってからじゃないとw
前や後ろの人だってほら」


後ろを振り返ったが、
誰もパンフレットを見ている人はいなかった。

ガルウィンド
「ね。
見る前から開けちゃネタバレになっちゃうし・・
楽しみはとっとかないとね!」


トゥルース
「そ、そうだね」


何に反応したのか
トゥルースはつい尻尾を刻むように振った。

後ろから見ていた一般客は
何を興奮しているのか・・といち早く察知した。



ガルウィンド
「喉渇いてきたなぁ・・
ジュース買ってくる」


トゥルース
「あ、それじゃあ俺も・・」


折りたたみ椅子に座っていたトゥルースは
よっこらしょと立ち上がった。

ガルウィンド
「あ、トゥルースは座ってて平気だよ。
みんなの分も買ってくるから」


トゥルース
「あ、うん・・」


ホコリ
「にゃ、一人だけ辛い思いさせらんねーから
俺っちも付き合うぜ!」


二人はそう言って
行列から離れていった。

トゥルース
「・・・はぁ」


ドルチェは少し残念そうにため息をついた。
それに対し、ドルチェが気づいた。

ドルチェ
「ん、どしたの?」


トゥルース
「あ、いや・・」


ドルチェ
「それにしてもトゥルースって
本当に身体弱いんだね。
って僕も人のこと言えないけど」


トゥルース
「ドルチェは単に
運動嫌いだったんじゃないの?」


ドルチェ
「んんそうかな?
ただ室内活動の方が好きだっただけで」


トゥルース
「でも運動始めたらそんなに男っぽくなったんだろ?
やっぱりただの運動嫌いじゃ」


ドルチェ
「そうかな・・やっぱ」


乙女体型のトゥルースも
ドルチェの変わりように少し関心を持っていた。


一方。

ホコリ
「にゃ、なんだあれΣ」


ホコリが指差した方向に
謎の黒い物体の集団が姿を現した。

ガルウィンド
「え、なんすか?」


ガルウィンドも思わず
ホコリの指の先に目を向ける。

ガルウィンド
「ぶww」


ガルウィンドは思わず吹いてしまった。

ホコリ
「あれ・・どっかで見たよーな」


ガルウィンド
「あれゼーレですよ、ホコリさん!」


ホコリ
「ぜ、ゼーレ?」


黒い物体には
”SOUND ONLY"という文字が書かれていて、
その下に01,02,03とナンバーが記されていた。

ガルウィンド
「ゼーレのコスプレなんて初めてみた・・w」


ホコリ
「コスプレ・・
ただ足生えてるだけじゃねーか」


これはいいネタ光景だw
と言わんばかりの表情で
ガルウィンドはとっさにデジカメを取り出した。

黒い物体の集団から足が生えているという不気味な光景に
ホコリはただ黙って見ているしかなかった。



ホコリとガルウィンドが戻って40分後。

スタッフ
「大変お待たせいたしました。
お待ちのお客様はどうぞお入りください」


ホコリ
「あ”ーやっと入れるぜ!」


ドルチェ
「みんな、中入ったらなるべく
早歩きね。
じゃないと良い席取れないから」


トゥルース
「あ、ドルチェ」


ドルチェはマナーに引っかからない
ギリギリの速度で劇場内に入っていった。

ホコリ
「何だかんだ言って
一番こーふんしてんのドルだな」


3人はドルチェの早歩きに少々呆れながら
そろって劇場内に入っていった。



トゥルース
「やった・・」


ガルウィンドの隣の席に座れたトゥルースは
拳を握り締め、勝利を確信した。

ドルチェ
「真ん中の真ん中のちょっと右側って
めちゃめちゃ凄い席取れたねw」


ホコリ
「そりゃーそうだろ」


ガルウィンド
「まぁ、いいんじゃないすか?
とりあえず・・」


ホコリ
「まーな、でもこれで
やっと座れるぜ・・」


にゃはーと言わんばかりに
ホコリは座席に腰掛けた。
さすがは日本一大きい映画館だけあって
座席もそれなりにふかふかだった。

ホコリ
「っていうか
カーテンでっけー!」


目の前のスクリーンを覆いかぶさっている
巨大なカーテンに誇りは驚愕していた。

ドルチェ
「見る前から興奮してどうすんのw」


ホコリ
「にゃはは、こんなでっかいの初めてだからさ」


ガルウィンド
「ふぅ」


4人はそれぞれ違うことに
反応したり興奮したりしていた。

ガルウィンド
「トゥルース、大丈夫?」


トゥルース
「あ、うん。
なんとか」


少々疲労気味のトゥルースを気遣うガルウィンド。

トゥルース
「何だろう、映画を見る前から
ちょっとドキドキしてきちゃって」


ガルウィンド
「そうなんだ、
トゥルースも結構素直なんだねw」


トゥルース
「そ、そうだね」


さすがにガルウィンドも
トゥルースの真意に気づかなかったようだ。



15分後。
劇場内は真っ暗になり
目の前のカーテンが一斉にオープンした。

ホコリ
「やっぱでけーな」


巨大なスクリーンに
当然ホコリは驚愕した。
さすがにはしゃいだら迷惑になると思ったのか
ホコリの声は小さかった。

トゥルース
「・・・」


トゥルースの心臓の鼓動はさらに大きくなった。

そして何故かトゥルースの手首は
若干震えていた。

ガルウィンド
「あ、お菓子買ってくんの忘れちゃった・・
予告編だし今のうち行ってくるよ」


トゥルース
「あ・・」


ガルウィンドは小声でそういうと
こっそりと立ち上がり、小走りで
劇場の外へ出て行った。

トゥルースは何故か悔しがっていた。

一方ドルチェとホコリは。

ドルチェ
「・・・」


ホコリ
「・・・」


二人は予告からすでに見入っていた。
ホコリはでかすぎるスクリーンに映し出されるシーンに
圧倒していただけだった。


ガルウィンドが戻って5分後。

いよいよエヴァが放映された。

何気にホコリの始まった始まったという声を発していたが、
誰の耳にも聞こえるはずがなかった。



放映して30分くらい経った。

トゥルース
「・・・」


トゥルースはちらっと
ガルウィンドの方へ目を向けた。

ガルウィンド
「・・・」


ガルウィンドは目の前のスクリーンに釘付けだった。
当たり前だ。

トゥルース
「・・・」


ガルウィンドの視線を確認すると、
トゥルースは右手を少し震わせながらゆっくりと動かし、
ガルウィンドの方へ差し伸べていった。

トゥルース
「ふぅ・・ふぅ・・」


トゥルースの鼻息がだんだん荒くなっていった。
当然左隣の赤の他人と
右隣のガルウィンドには聞こえない。
4人の後ろに座っていた一般客も
当然トゥルースのことなど眼中になかった。

トゥルース
「あと少し・・あと少し・・」


トゥルースの手先が
ガルウィンドの手に触れようとしていた。

そのとき、
突如サラウンドによる
とてつもなくどでかい音が劇場内に響いた。

トゥルース
「はぅ!?」


ガルウィンド
「ん、どしたのトゥルース」


トゥルース
「あ・・・な・・なんでも・・」


こういうとき、どんなに肝っ玉が強くても
こっそり何かをしようとしていたときに
バカでかい音が聞こえるとビビってしまうものだ。

トゥルースは思わず引くような声をあげてしまい、
ガルウィンドもさすがにトゥルースに気づいたようだ。
トゥルースは顔を真っ赤にしながら
自分の手を膝元に戻していった。

その後、空気を読んだのか
トゥルースが手を差し伸べることはなかった。





そして放映が終わり、
4人は劇場内を後にした。

ホコリ
「にゃはー、すっげー面白かったな!」


ドルチェ
「うん、まさかの展開に度肝抜かれたよねww」


ホコリ
「っていうかみんな拍手してたのは
ちょっとびっくりしたぜ」


ドルチェ
「公開初日だからだよ」


二人は予想外の展開にテンションゲージがMAXになっていた。

ガルウィンド
「ボクなんてもう一度見に行こうかなって考えたくらいだよ〜
ね、トゥルースw」


トゥルース
「え; う、うん」


トゥルースは映画よりガルウィンドが気になっていたのか、
あまり映画に集中できなかったようだ。

ドルチェ
「マリも結構可愛かったよね〜
今まで僕綾波ファンだったんだけど
一気に傾いちゃうかもww」


ホコリ
「なー、俺っち腹減ってきちゃった・・
どっか店行こうぜ店」


ドルチェ
「うん、そうだね。
どっかにバーガーショップなかったっけ」


ガルウィンド
「マックは間違いなく混んでるだろうから
ちょっと歩くけどウェンディーズとかにしない?」


ホコリ
「どこでもいーや、
早く行こうぜ!」


3人は心をウキウキさせながら歩き始めた。
一方トゥルースは敗北に満ちた表情で
トボトボと歩いていった。

トゥルース
「はぁぁ・・」


トゥルースは深くため息をついた。

ガルウィンド
「トゥルースっ」


トゥルース
「はっ」


ガルウィンドはトゥルースの歩行速度に合わせ
そしてそのまま彼に話しかけた。
トゥルースは不意をつかれ、ドキっとした。

トゥルース
「な、何・・? ガル」


ガルウィンド
「トゥルースったら、
映画見てるときに僕の手握ろうとしたでしょ」


トゥルース
「ΣΣΣ」


バレていた。
当たり前と言えばそうだ。
トゥルースの額からは冷や汗がにじみ出てきた。

ガルウィンド
「気持ちはわかるけど・・
さすがにあの状況じゃあ
ちょっとKYって感じだったよ」


トゥルース
「あ・・ご・・ごめん・・」


ガルウィンド
「わかってくれればいいよ。
今度は違う映画のときに
二人きりで行こうよ。 ね?」


トゥルース
「いいの・・?」


ガルウィンド
「もちろんv まぁボクはラブロマンス系は
あんまり見ないんだけどね」


トゥルース
「それでもいいよ・・
二人きりなら・・」


ガルウィンド
「うん、もちろん二人きりさ♪」


トゥルース
「ありがとう・・ガル」


トゥルースの顔に笑顔が戻った。
このときは勝利というより素直に喜びの表情だった。

二人の手は、このときしっかり握られていた。





帰宅後。

トゥルース
「はぁ・・今日は疲れたな・・」


すっかり疲労していたトゥルースは、
服を脱ごうと自分の部屋へ向かっていった。

〜〜〜〜♪

トゥルース
「ん?」


部屋へ入った瞬間、
トゥルースの携帯から着メロが流れた。

トゥルースは即座に携帯を取り出し、
パカッと開けてメールチェックをした。

トゥルース
「あ、ホコリさんからか」


早速ホコリからのメールを確認した。

すっかり忘れてたんだけど
俺っちジュース買いに行ったとき
すげー変なもん見つけちまってさ。
ホントに変だったから撮っちまった。
てことだからその写真送るぜ!

文章と共に添付されていたのは、
警備員に追いかけられているかのような
英単語とナンバーの書かれていた
黒いダンボールに身を包んだ
謎の集団の写っている画像だった。
ちなみに全員二本の足がニョキっと生えていた。

トゥルース
「なんだ・・これ」


どこかで見たような・・と思いつつも
あまりにシュールな画像に
トゥルースは黙ってみているだけだった。


終わり。


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