「はぁぁ・・」
鬣の少年は窓に向かってため息をついた。
「大丈夫・・?
最近元気ないみたいだけど」
長い黒髪の少年がそっと声をかけた。
「トゥルース・・ボクもうダメっぽいかも」
「え・・」
「ボクって何やっても中途半端だし」
「どうしたの急に・・
ガルらしくないよ」
「君はボクのキレイなとこしか
見てないからねぇ」
毒のある一言が、トゥルースに重くのしかかった。
「ごめんごめん、冗談だよ」
トゥルースは笑わなかった。
その顔を見ずに
窓を眺めたまま、ガルウィンドは喋り続けた。
「っていうかさ・・
もうすぐボクら卒業するじゃん?」
「うん」
「みんなそれぞれやること決まってるのにさ、
ボクは何やってんだろうねぇって」
「決まらないの・・?進路」
「全然。
部活は引退しちゃったし、
絵は趣味でやってるし、
かといって勉強できるってわけでもないしね」
「他にやってみたいことってないの?」
「わかんない」
その一言で
トゥルースは返す言葉を失った。
「トゥルースは整体の学校行くんだっけ?
凄いよね、ボクなんかよりずっとやりたいこと見えてるし」
「そ・・そんなことないよ。
途中で挫折するかもしれないし」
フォローになっていなかった。
「あ、すいませーん、
目玉焼きハンバーグおかわりお願いしますー」
「ガル・・」
「トゥルースは優しいよね。
ボクがこんなんなっちゃっても
必死で励ましてくれるんだもん」
「当たり前だよ。
俺はガルのためなら
何だってしてあげたいもの」
「それじゃあ結婚して」
「え」
「なぁんてね・・」
トゥルースは一瞬動揺をしてしまった。
本当にできるなら結婚したい。
もうどっちも18歳だから
結婚できるはずだよ・・
「ごめん、ボクそろそろ帰る」
「え、ガル」
「付き合ってくれてありがとう。
今日は帰ったらそのまま休む」
ガルウィンドはよいしょと立ち上がった。
「待ってよガル」
「あ、大丈夫。
最後のはボクのおごりでいいから」
ガルウィンドはそう言い残すと、
さっさと店を出て行ってた。
トゥルースはガルウィンドの落ち込んだ後姿を
ただ見ることしかできなかった。
「お待たせしましたー」
店員の持ってきた
4皿目の目玉焼きハンバーグがそっと
テーブルの上に置かれていった。
「あ、どうも」
「空いているお皿お下げしますねー」
テーブルの上に置いてあった
3皿を店員がよっと持っていった。
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現実とファンタジー
「第3話」
「はふぅ・・ごっそさんでした」
茶色い狼少年は
お腹をポンポンと膨らませながら
満足げな顔をした。
「良く食べたわねぇ・・
うちの夫や息子といい勝負だわ」
肉なら何でもござれと言う夫の妻、
同じく息子の母親である翡翠は
思わず関心してしまった。
側で見ていた双子の兄弟も
少しお腹を空かせた。
「あ、僕らは大丈夫ですよ」
すかさず兄のドルチェは遠慮した。
「兄貴・・」
弟のレオはちょっと呆れた。
「あの・・」
「ん?」
茶色い狼少年、ロンズは
少しおどけた顔をして話しかけた。
「さっきはごめん」
「え?」
「攻撃しようとして」
「あぁ、あれ?
さすがにいきなりだったから
僕びっくりしちゃったけどね〜w」
自分が怪我をしていないからと、
ドルチェはハハハっと笑い声をあげた。
「俺さ・・弓矢を使うと
いつもあんな風に俺とこ返ってくるんだ。
今度こそ!って思っても・・どうしても」
「あるよね〜そういう変わった能力」
「人事じゃねぇよ。
おかげで俺何度も死に掛けちまってんだぜ」
「まぁまぁw
今回も死ななくてよかったじゃない」
結局人事だと思って返答してしまった。
レオは何だよこの会話・・と
目を細くして二人を見ていた。
「それにしても、やっぱり
リグレイスなんて国聞いたことないなぁ。
翡翠おばさんは知ってます?」
「いいえ、私も知らないわ」
ドルチェの問いかけに
翡翠は首を横に振って答えた。
「あれじゃないの?
世界地図にもちっちゃく乗っかってるくらい
小さな国だったりとか」
「そうかな、やっぱり。
護身用に弓矢用いるくらいだからそうなのかな」
「近代的っていうか、中世的っていうか」
「ちょ、ちょっと何の話してんだよ;」
ただでさえここがどこかもわからないロンズは
頭の中がこんがらがってしまった。
「ごめんごめんw
まぁ少なくとも僕らは悪い人じゃないから」
「自分で言うのもあれだけどな」
「あぁ・・それはわかったよ。
俺の怪我の手当てもしてくれたし」
「名前言ってなかったよね。
僕はドルチェ、んでこっちが弟のレオ」
「よろしくな」
「あぁ、さっきも言ったけど
俺はロンズってんだ。
にしても二人ってあんまり兄弟っぽくないよな」
「そりゃそうだよなぁ・・
狼とライオンだし」
顔はそっくりだけど・・と
レオはチラっと兄の顔を見た。
「僕は別に気にしてないけどね〜w」
気楽なドルチェを、レオは少し羨ましく思った。
「そんでさロンズ。
これから君はどうするの?」
「ロウを探す」
「ロウ?」
「俺の友達だよ。
俺と一緒にいたはずなのに
いつの間にかいなくなっててさ・・
気がついたらさっきのとこに倒れてた」
「迷子になったようなものか」
「迷子って次元じゃなさそうだけど・・」
3人はうーんと首をかしげた。
そしてドルチェが口を開いた。
「とにかくさ、ここでじっとししても何もできないし・・
僕らでよかったらそのロウって子を探すのに協力するよ!
ね、レオ」
「でも、受験はどうすんだよ」
「そりゃあ受験も大事だけど、
別にあしたあさってにあるってわけじゃないし、
勉強しなかった分は翌日倍勉強すればいいのさ」
すげぇ解釈・・とレオは思った。
「気持ちはありがたいけどよ・・
外見以外の手がかりは一切ないし・・」
「外見さえわかれば何とかなると思うよ」
「え・・」
ロンズはどういうことだという顔をした。
「とりあえず今日はもう外も暗いしさ、
ここに泊まっていきなよ。
いいですよね、おばさん」
ドルチェは自分の家でもないのに
さも自分の家のように勧めた。
「えぇ、もちろんよ。
ついでに君たちも泊まっていったら?」
「え、オレ達は・・」
「そうしようよ。
おばさんも家事で忙しいだろうし、
ロンズ君一人じゃ不安になっちゃいそうじゃん」
「いいんだけどさ、
なんかあつかましいというか」
他人の家に泊まることに慣れていないレオは
戸惑い気味に喋った。
「あら、私はそんなこと気にしないわよ。
むしろ一人だから寂しくなくて嬉しいわ」
「そ、そこまで言うんだったら・・」
レオは頬を少し赤く染めた。
その顔を見てドルチェは言った。
「レオ、ちょっとツンデレ入ってない?」
「は、入ってないし!」
「本当に大丈夫かな・・」
ロンズは再び不安な気持ちになった。
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一方そのころ。
「うぅぅぅ」
「うわー、もろに飲んじゃってた」
ロンズに似た茶色と白の毛並みの狼少年が、
一人の青白い男に介抱されていた。
続く。
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